2013-03-23

昔の風景の中に映るもの



先日、連載しているコラムの取材で藁細工職人にお会いして来ました。
珠洲で藁細工を作っている藪下さんです。

以前からツアーや商品製作でお世話になっていたのですが
今年に入ってお顔を拝見するのは初めてでした。

お会いして話が始まると
いつもと変わらず、とてもお元気な御様子でした。


藁細工以外に藪下さんは、自身が子供の頃の珠洲の風景や出来事を絵にしています。

藪下さんは、自身の記憶を頼りに、能登の歴史を伝える
沢山の貴重な絵を記録として残されています。



昔、田んぼに使う溜池の水が不要になった時期
水を抜いて村人皆で、身動きの取れなくなった魚を獲って食べました。


昭和10年頃の能登の台所。
スイッチをひねれば火が付き、蛇口をひねれば水が出る
そんな現代とはまるで別世界
調度良い不便さが、そこにあったのかもしれません。


耕うん機もトラクターもない時代。
牛と人間が一緒に働いています。



冬の間せっせと作りためたひょうたん細工。
「コレを使って何かしてくれんか。」
と前々からお願いされていたので、何かやることになりました。

ところでこのひょうたんの表情
どこかシュールでステキ過ぎです。




「いつ死ぬかわからんし、なんもいらん」
っといつも私に言っている85歳の藪下さん。

「そういうこと言ってる人が、一番長生きしますよね」
っと私が言うと、ワハハっと笑っていました。

藪下さんの描く昔の思い出の世界。
それは私にとって、まるで何か新しい日常の世界に映ります。

そんな昔の能登の生活や、思い出話を聞かせてもらうと
なぜだか、とてもワクワクしてしまうのです。




2013-03-15

Noto Photo







毎日がグレーの空から
青い空が広がる日々が増えて来ました。

ポカポカ陽気になってきたのですが
精神的にはあっぷあっぷ。

たまった仕事がずしりと肩にのしかかった年度末の3月です。


そんな中、ブログとは別にフォトエッセイ的なサイトを初めました。
その名も「Noto Photo : ノトフォト

まだまだ写真が少ないですが
溜まってきたら、何か一つの「形」になるのではないかと思います。

写真を通して表現する能登の世界
たまに覗いて見て下さい。








2013-03-06

日常の価値




監督の名前はアレキサンダー・モストラス
彼は写真家でもあり、映像監督として自らカメラを回すこともあります。



そんな彼がファインダー越しに見た能登はどんな世界なのでしょうか。



 昨年12月に国連大学から、金沢大学を通して、能登をコーデイネート出来る人材を探している、と私に連絡がありました。

外国の方に、能登を気楽に案内することは過去にしてますが、撮影となるとどうだろう...。

本業はフリーランスのデザイナー。あまり生活の負担になるような事はしたくない...というのが本音。だがしかし、断れば恐らく能登には来ないかもしれない...。少しの興味本位と、やるしかないという気合で、この仕事をOKしました。

大学からの最初のコンタクトが1回のみで、後はいきなり彼らとメールでやり取りする事となりました。その後しばらく、毎日の様に長文の質問メールが送られてきて、英文でそれをほぼ毎日返信する事となりました。

 彼らの最初の要求は「アエノコト」「塩田の塩」「提灯作り」でした。やり取りの中で、塩と提灯は時期や文化的な関係も含め、取材対象には難しいと伝えました。

彼らの要求と、私のアイデアをミックスしておおまかな形が出来上がったのが、1月下旬。そして2月14日、監督のみが現地の下見を兼ね、前乗りで能登へやって来ました。




 監督と能登空港で出会い、ホテルへ向かう車中、撮影対象や作品について話しているうちに、彼の描く作品は日本を紹介する旅番組でもなく、単純なドキュメンタリーでもないと理解しました。彼の要求するものは、その地に生きる「人」と「継承」でした。

 下見1週間、撮影1週間という期間で、そこまで掘り下げられるのか?自分は単なるコーデイネーターとしか思っていなかったので、これはとても大変な作業になると感じ、「私は現地コーデイネーターの役割の範囲でしか動けない。また本業もあるから、まるで24時間休みなしのような形で、拘束されるのはとても無理だ。」とスタッフとぶつかる事もありました。

企画は壮大なのですが、予算は少ない中での企画でした。移動は私の自家用車を使い、ドライバーを兼務しました。コーデイネートと通訳、スケジュール作成と管理、家へ帰るとアポ取りの電話。撮影が始まると、朝早く家を出て、夜遅く帰る毎日。ハードなスケジュールですが、それは彼らもまた同じ。そして彼らの作品作りに向かう情熱を見ていくうちに、小さいことで不満を言う自分が情けなくなって来ました。




 監督のポリシーは「予備知識を事前に多くつめ込まず、初めて訪れた感動や、発見を映像に残したい」という事でした。彼はアエノコトとリンクして、自然崇拝と神の存在に大きな関心を持ちました。

どの家の中に神棚があり、田の神様が存在し、能登の各集落には神社がある。彼の目にはそれはとても新鮮な出会いで、このことは作品の大きな核となるテーマにもなりました。日本人と神道(自然崇拝)を神道の原点とも言える、アエノコトを中心にして描いてゆきたい...と構想が膨らみ、神社や神道にについても深く取材する事にしました。

 フランスとその周辺国で放送されるこのドキュメンタリー番組「Linkage」は、世界中を撮影対象としています。日本に来る前に彼らはサハラ砂漠で「人と文化、音楽」を対象とした1時間番組を製作し、第二弾が日本、それも奥能登のみの番組として1時間枠で放送されます。

 撮影対象や現場に訪れる度に、彼は「本当にすばらしい!!予想以上に驚いた!」と良く口にしていました。私達の当たり前の日常は、いかに価値あるモノなのか。彼らの横に立ち、一緒にその光景を見ていると、改めて自分の住んでいる能登という場所の凄さを思い知った気がします。


文化や風土を作るのはヒトのちから
私はカメラのレンズから入ってくるそんな情報を
私というフィルターを通して、見る人に伝える必要がある

By Alexandre Mostras







この場を借りて協力してくださった能登の皆様に感謝いたします。


撮影協力(順不同)

珠洲ビーチホテル
乗光寺 落合家
松波酒造
Keiko Masuya
カラオケキャビン エーワン
輪島塗 蔦屋漆器店
輪島塗 垣地碗木地所
蛸島漁港
珠洲ちょんがり保存会
上黒丸素敵な散歩道実行委員会
上黒丸 向家
若山町 滝山家
羽黒神社 高山家 雅楽演奏のみなさん
珠洲まるかじりのみなさん
正院町 恵比寿湯
蛸島町 民宿むろや
吉祥寺 お茶会のみなさま
湯宿さか本
蛸島小学校
農家民宿ゆうか庵
狼煙町 山伏太鼓保存会
うどんのんち

その他、下見、アドバイス等でご協力頂いた皆様

いつもがんばってるね〜
っと急なお願いにも、心よく引き受けたくれた能登の皆様
皆様のホスピタリティあっての作品ということを
決して忘れることはありません









2013-03-01

Final Cut 撮影終了



約2週間に渡っておこなわれた下見と撮影
無事に終了しました。













妥協なく一気に走り続けた二週間
まだ心の中の熱が収まりきれていません。


この撮影の詳細は心が落ち着いた時に
改めてご報告致します。