吹雪のある日、珪藻土コンロを生産する能登燃焼器工業へおじゃまさせて頂きました。案内をしてくれたのは舟場さん。東京で公務員の仕事をしていたのですが、父親の後を継ぐべく数年前に30代の若さで珠洲へ戻って来た方です。
珪藻土コンロは昔、珠洲を代表する主力産業で、法人、個人問わず珠洲のいたるところで生産されていました。人々の火の扱いが、炭からガスへ移るとともに生産量が減り、珠洲でコンロを生産する会社は今では数社を残すのみとなっています。
最初に舟場さんは珪藻土の採掘場である坑道へ案内してくれました。迷路のような暗い坑道の奥深く、黙々と珪藻土の壁を削る職人がいました。職人は一人、槍の様な長いノミを使い珪藻土の壁を四角く削っています。誰もいない暗い坑道でザクッ、ザクッという音を響かせ一人黙々と作業する職人の後ろ姿が印象的でした。
坑道を出ると舟場さんのお父さんが、坑道から削りだした珪藻土の固まりを整形していました。機械で丸くされた珪藻土の固まりを、感覚だけで整えていきます。底の接地面は平らでないと商品にした際に傾いてしまうのではと疑問に思いお伺いしたら、「感覚で水平にする」と答えが帰ってきました。船場さんのお父さんは、平らなノミを取り出すと、チョコレートを削るようにザクザクとコンロの底を平らに整えていきます。
「ここまで出来るようになるには30年はかかる」
お父様が言われたその言葉には、18才からこの道に入り、40年以上休みなく働いてきた職人の重みがありました。
様々なコンロの形に合わせ沢山の種類のノミがあります。
整形後は窯で焼かれ、金具で補強すると珪藻土コンロに仕上がます。暗い坑道の中で発掘されるかのように切りだされるプランクトンの化石、珪藻土。その珪藻土の塊を地上へと掘り出し、再び命を吹きこむように成形して形作られた珪藻土コンロ。こんな行程をたどり一つのコンロが出来上がる事に驚きを感じます。
今の時代だからこそ、1つのモノが完成するまでのものがたりをしっかりと伝えることが重要視され、こうした古くからあるモノ作り産業も再び陽の目を見ることに繋がるのかもしれません。
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