2013-04-27

こころ


奥能登の珠洲に画家が愛した素敵なお屋敷があります。日本画家の勝田深氷さんのアトリエです。残念ながら深氷さんは昨年の7月にお亡くなりになられました。

深氷さんは、日本画家であった伊東深水の二男で、姉は女優の朝丘雪路さんにあたります。浮世絵と日本人の美意識を、海外で発信し続けた功績のある方でもあります。

深氷さんと奥様は、米国と珠洲を行き来しながら、ここアトリエ兼お住まいとなる、「勝東庵」で18年間暮らしてこられました。砂だらけの土地に雑草をわざわざ植え、見事な竹林を育て、ご夫婦で長い年月を掛けてこの素晴らしい空間を作り上げたのです。

この素晴らしい景観の勝東庵ですが、元々は珠洲市の所有するものの為、今年7月に閉館すると聞きました。





見事な竹林、綺麗に整理された庭
勝田深氷という人物の美意識を感じることができます。


玄関には「桜心」という作品を見ることが出来ます。
今年見た桜で、一番美しい桜でした。


この作品が完成する前にお亡くなりになられてしまいました。
力強さと、華麗な美しさが混在しています。




引っ越した時、ダンゴムシが家の中を沢山歩いていた
ネズミも沢山出て大変だった
砂地の庭に雑草を一つ一つ植えていった
大事に大事に苔を育てていった

そんな沢山の想いで話を、奥様は私に聞かせて下さいました。

そんな中でも前向きに、珠洲でお過ごしになられ
丁寧に丁寧にお庭を作り続けてこられたご夫妻。

その空間ももう無くなりつつあります。






勝田深氷という日本画家がここ珠洲に住んでいたのです。
勝東庵に訪れ、そう強く感じました。

彼の感じた珠洲
愛した庭
愛した家

一人の画家が景観を我が子の様に大切にする

彼の見た珠洲の景色
庭の景色

それらがこころとなり
筆を動かし
紙の上に描かれていくのです。


そんな景観がなくなるかもしれません。
本当にこれで良いのでしょうか...

珠洲を離れる事に涙する奥様とお別れした後
何度も何度もそんなことを考えていました。

今後、今まで通りのやり方で管理する難しさは、確かにあると思います。
ただ、どうか勝田深氷さんのこころが、珠洲へ残る形になることを祈ります。



4 件のコメント:

  1. 今井さん
    東洋大学の志保石です。
    先日はどうもありがとうございました。
    とてもすてきなお話で感動しました。
    シェアさせていただいてもよろしいですか。

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    1. こちらこそ、楽しくお話が出来て、貴重な体験になりました。拙い言葉で綴ったものですが、ぜひシェアして下さい。よろしくお願いします。

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  2. 蛸島駅に次いで、また1つ残さないといけない物ができましたね。やるしかないでしょう。ユタカ君!(笑)

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    1. タカさん、メッセージ気付かんかった…(^^;;

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